大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)1422号 判決

記録に顕れた原審における審理の結果及び当審における事実の取調の結果について考量するときは、原判決の採証、認定には、所論のような誤があることが明らかである。即ち、記録に顕れた原審における被告人並びに証人河野勇一郎、同古井昇、同鈴鹿伝四郎及び同小倉孝作の各供述内容と当審における被告人並びに証人河野勇一郎、同鈴鹿伝四郎、及び同石井岩吉の各供述とを綜合して判断するときは、右河野勇一郎は、元立木の購入、製材及び該木材の販売を業としていた者であつて、被告人の援助により営業上の危機を救われたこともあつたものであるが、昭和二十四年十一月下旬被告人の手を経て被告人の実父鈴鹿伝四郎所有の立木を買入れ、これを伐採搬出したが、その代金の支払を行わず、被告人の督促に対し、一時延しにその履行を引き延ばしていたが、同年十二月下旬被告人に対し、「この代金は、年末までには必ず支払う、自分は、人夫賃でも支払えなかつた分は、材木をやつて解決して来たのであるから、若し約束どおり支払えないときは、どんなことをされてもよい」との趣旨を述べたので、被告人は、相手方が右代金の支払について、なおも猶予期間を怠つた場合は、該木材の処分を許容したものと解し、河野が翌年一月に至るも、依然その支払を怠り、誠意ある態度をも示さないところから遂に昭和二十五年一月中旬本件木材を古市昇に売却処分したものであることを認めることができる。従つて、被告人のかかる所為は、慎重を欠くうらみがないとは言えないのであるが、少くも、公訴事実にあるような刑法上の窃盜罪を認定するには、その犯意を肯認し難いものと言わなければならない。原判決には、判決に影響を及ぼす事実の誤認のあることが明らかであつて、論旨は理由があるから、刑事訴訟法第三百九十七条第四百条但書により、原判決中有罪の部分を破棄して、当審において更に判決をすることとする。

よつて、本件公訴事実については、犯罪の証明が十分ではないものと解しなければならないから、刑事訴訟法第三百三十六条後段により主文のように判決する。

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